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Marie-Madeleine Petit

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    Marie-Madeleine PetitMarie-Madeleine Petitという女流ピアニストがいた。寡聞にしてあまり詳しい情報も提供できないが、イーヴ・ナットなどに習い、ジュネーヴ国際音楽コンクールにフィオレンティーノなどと並んで1947年第二位入賞。1950年代に入ってから33回転の7インチ盤を二枚リリース。それが、ここで紹介するレコードだ。それほど人気のあるピアニストではないので注目する人もほんの一握りのマニアだけだと思うが、どこか心に残る不思議な魅力をもつレコードなのだ。

    まずはベートーヴェンの「月光ソナタ」。針を落としてまず気づくのはピアノの音の美しさ。プレイエルなのだろうか?浅めの打鍵で幾分ドライではあるが、濁りのない澄んだタッチのアルペジオが心地よい第一楽章。同じくフレンチ・ピアニズムに身を置いた女流ピアニストのAline van Barentzenが第三楽章で見せたような激情や深刻さはないものの、パッセージを丹念に扱いつつも畳み掛けていく独自のニュアンスが興味深い。詩的な情感を全体に漂わせた後味の良い演奏だ。



    もう一枚のショパンは、ベートーヴェン盤の後に入手。どちらが好みかと言われれば、迷いはするがショパン盤を挙げる。片面に「バラード第1番」、裏は「エチュード作品10-3, 8, 5」という平凡な選曲。録音のせいか実際にピアノがちがうのか定かではないが、ベートーヴェン盤ほどピアノの音色がまず印象として飛び込んでこない。さらに、名演の多い「バラード第1番」ではあるが、個人的にはあまりすすんで聴きたくない曲だ。
    好ましくない条件下だが、途中で針を上げるどころか繰り返し聴いてしまった。ハンガリーの女流にアギ・ヤンポールというピアニストがいるが、彼女の残した「バラード全集」を思い出した。大体「バラード」は必要以上に劇的に演奏される事が多いような気がするが、そういった単純なエモーションは長年ショパンを聴いてきた人間には辛いものがあるのではないだろうか。そんな風に思っている私には、Marie-Madeleine Petitの端正さがとてもありがたいのである。
    こういった大曲の演奏は全体の構成力の重要性がまず挙げられる。その意見におおむね反対ではないが、ショパン演奏においては堅苦しいアカデミズムよりも、もう少し軽い「後味」のような全体の清涼感の方を大切に感じる。またディテールにおいては「瞬間の美」でもかまわないから、そのピアニストならではの詩的な表現を聴かせてほしい。そうでなければどんなにメカニカルがパーフェクトだったとしても、また聴きたいと針を落とすまでにはいたら無い事が多いのだ。

    Marie-Madeleine Petit長々と書いてしまったが、実は私が一番気に入っている演奏は作品10からの三曲のエチュードだ。「別れの曲」は予想どおり清純なピアニズムが功を奏し、理想的なインテンポとレガートの美しい内声部、そして自然なページのめくり方とでも言えばよいのか、息の継ぎ目での間の取り方は絶妙だ。「黒鍵」は遅めのテンポで丁寧に弾かれていて、とくにピアニシモやがんがんと響かせないあたたかな低音部が印象的だ。

    エチュードというと技巧の爽快さとスリルを求めるようなアスリート的な演奏があふれる一方、詩的な演奏が少ないように思う。ここに収められた「エチュード作品10-8」はMarie-Madeleine Petit 出色の演奏というだけでなく、多く名演奏中でも特に記憶に残るもの。技巧的な野心の匂いもなく、一個の音楽としての美しさに無心で耳を傾けることができる。もう少し年長であるIrene Scharrerの10-11あたりの名演レコードの美しさに通じるところがあるかもしれない。10-8にはKleebergのピアノロールや、Effenbachのエンディングが印象的なレコードなどもあるが、私は今や忘れ去られてしまったMarie-Madeleine Petitの「エチュード作品10-8」を絶品だと思っている。



    ショパンの練習曲は、最近12曲もしくは24曲セットでレコード化される事が多いけれど、前奏曲と違ってもともと24曲を聴き通すように作られていない。そして、ピアニストも24曲をそれぞれ魅力的に演奏できる力量のあるピアニストを聴いたことが無い。落穂拾い的ではあるが、こうして名演奏を一曲づつ聴くくらいの方が私には丁度良いのかもしれない。

    今日もしゅるしゅるレコードを磨く。



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    コメント
    マリー=マドレーヌ プティ(読み方が合っているかどうかはわかりません)が残したLP録音は、やはり7インチ盤2枚分だけだったのでしょうか、大変に残念な思いです。仏CalliopeからCDが出ていることを友人に教えていただいたのですが、既に廃盤のようで入手するのに苦労致しました。こちらではシューマン、ラヴェル、ストラヴィンスキーとLPとは違ったレパートリーで、このピアニストの魅力を大いに楽しむことができました。一音一音を大切に丁寧な音楽作りを基本にしていて、「子どもの情景」など慈しむような表現に心動かされましたし、ラヴェルなども大変に純度の高い音楽を味わえました。
    なお、このCDではSteinwayを弾いていますが、しっとりして落ち着いた音色も大変魅力的、正統的なフレンチ・ピアニズムの系譜に名を連ねるべきピアニストという印象を受けました。
    • Sales Notebook
    • 2009/04/05 6:35 PM
    > Sales Notebookさま

    プティを愛聴されている方がいらして、とても嬉しいです。

    > 仏CalliopeからCD

    初めて知りました。廃盤とは何とも残念ですが他にも録音が残されているという事が判明しただけでも大きな朗報です。ありがとうございます。

    アナログ盤に関しまして、7インチ盤しか無いというのも珍しい例に思いますので、他にもあると考えたいもの。

    プティの演奏はフレンチ・ピアニズムの魅力満載です。
    フォーレやフランクなどの演奏も聴いてみたくなるようなピアニストですね。

    今後ともよろしくお願い致します。


    是非2枚ともいずれDIWで復刻して下さい〜
    期待してます。
    • jun
    • 2009/04/28 8:02 AM
    > junさま

    コメントありがとうございます。
    ぜひ復刻したいと思っています。
    DIW Classicsの第二シーズンが目出たくリリースされるよう
    これからもぜひぜひ応援して下さい!!
    お願い致します。

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