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ロシア・ピアニズムの真髄

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    色々な所で書いているのだが、つい先日ピアノ録音史上もっとも重要なシリンダー(ロウ管)録音が多数発見され、米マーストンから3枚組CDとしてその一部が発売された。


    「The Dawn of Recording: The Julius Block Cylinders」

    収録されたピアニストたちの録音は約100年以上失われていたものであり、ここに陽の目を見たのは真に奇蹟的な事である。

    ANNA ESSIPOVA (1851–1914)
    PAUL PABST (1854–1897)
    SERGEI TANEYEV (1856–1915)
    ANTON ARENSKY (1861–1906)
    VLADIMIR WILSCHAW (1868–1957)
    PAUL JUON (1872–1940)
    SANDRA DROUCKER (1876–1944)
    JOSEF HOFMANN (1876–1957)
    EGON PETRI (1881–1962)
    LEONID KREUTZER (1884–1953)

    以上、全員がピアノ独奏の録音の収録。

    また、ピアノ連弾では、

    LEONID KREUTZER and PAUL JUON
    SERGEI TANEYEV and LEO CONUS (1871–1944)
    SERGEI TANEYEV and PAUL PABST

    という、夢のような物凄いプログラムと相成っている。

    ここでもっとも注目すべきは1872年までに生まれたピアニストがなんと6名も含まれていることである。この1872年という年はこのブログをお読み下さっている方ならピンと来ていると思いますが、James Mathen Campbell氏のピアノ録音のディスコグラフィ第一巻の区切りにあたる年。(ちなみに続巻は出ませんでした。)研究者にはバイブルともなっているこのディスコグラフィだが、一部は触れられているものの詳細は記載されていなかった。そこに、これだけの情報を追記出来るのはなんとも幸せな気分である。

    そしてもう一つ注目すべき事は録音年代が1890年代なので、収録のピアニストは最年長のエシポワですら47歳というまだまだ脂ののった年齢。まさかエシポワやタネーエフ、パプスト、アレンスキーの演奏が聴けるとは夢にも思っていなかった。

    往年の巨匠たちのテクニックが批判的に語られる多くの原因は、発展途上のレコード録音技術と録音時の年齢によるものであって、少なくとも後者はこのロウ管では心配いらない。
    エシポワの優美で詩的なフレージング、タネーエフの言葉では言い表せないような厳粛なモーツァルト、パプストによるチャイコフスキーのパラフレーズは真にリアルタイムの音楽である事の説得力と感動に満ちている。一体、こんな素晴らしい演奏は、今どこに行ったら聴けるというのだろうか?



    もちろんロウ管なのでCDやLP世代の耳には決して心地よく響かないかも知れないが、それを別にすればアントン・ルビンスタインやチャイコフスキの時代のピアニストの演奏が、伝説ではなく現実のものとして甦るのであるからまったく奇跡としか言いようがない。

    僕はつねづねロシア・ピアニズムはソフロニツキーあたりがぎりぎり最後の世代であって、むしろ同世代でもオボーリン以降の人たちは「ソビエト・ピアニズム」と捉えている。
    そして「ソビエト・ピアニズム」こそが現代ピアニズムの原型であると考えている。
    だから、現代人には分かりやすいのかも知れないが、少しの例外を除いて私にはそれほど興味が湧かないのかも知れない。

    話が逸れてしまったが、このCDは1000組限定プレスという話を聞いているのと、今のところマーストンのサイトから直接購入しか出来ないようなので、手に入れたい人はとにかく早めのご購入をお勧めしておきたい。(追記:2009年7月現在では国内CD店にて入手可能です)

    CDだから磨かにゃい。

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