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Cziffra, Georges

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    Georges (György) Cziffra (1921-1994)


    Valse Tristeリスト譲りのヴィルトゥオーゾというと、Nyiregyhaziと、このCziffraを思い出す。どちらもリストと同郷のハンガリー出身なのは、偶然にしてもロマンティックだ。どちらも激動の人生を送ったが、生涯「流浪」し続けたNyiregyhaziよりも、Cziffraは「捕虜生活」「脱走の失敗」「息子の死」など、より重い荷を背負った人生を送った。

    この二人は、どちらも本当の超絶技巧家だった。Nyiregyhaziは晩年の録音しかまともに残されていないので、その偉大さを訝る人もいるかも知れない。しかし、最盛期である1940年代のサントラのために演奏された断片を聴いただけで、音楽的な洞察力のあるリスナーはその凄さが判るはずである。また、1973年のあの有名な「伝説曲第二番」の演奏を聴けば、この録音が奇跡の物証のようなものだと気付くだろう。(ただし最近出たCDではなく、IPAのLPで聴かないと意味がない。両方聴けば、その意味が分かります!)



    Nyiregyhaziがある種、神懸かり的だったのに対し、Cziffraは人の力を一番ピカピカに研ぎ澄ましたような演奏スタイルだった。あまりのテクニックに「内容が空疎」と非難もあったそうだが、おそらく嫉妬に過ぎない。私はメカニックの正確さと芸術性に重要な関係はないと思うたちだが、Cziffraの演奏は物凄いパッセージの中にも詩的センスを強く感じるのでとても素晴らしいと思う。1枚目の写真はそんなCziffraの残した最初期のSP盤「Valse triste」。ハンガリー出身のヴァイオリニスト、Vesceyの作曲をピアノにアレンジしたもの。よくあるエレジー・タイプの曲かと思いきや、一気に絶頂へ上り詰める胸のすくアンコールピース。この数年後にも同曲を録音していて、そちらは復刻されている。裏面はリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」の超絶アレンジ。まるでGodowskyのショパン・エチュードの様相。

    Mazeppaリスト弾きのCziffraの面目躍如は「鬼火」の演奏だと思う。これはAPRから2枚組のCDで発売されているが、これだけパーフェクトな超絶技巧でありながら、ポエジーを失わない「鬼火」は聴いたことがない。また「マゼッパ」の78rpm盤も唖然とするような凄い演奏だ。そういえば「マゼッパ」にはNyiregyhaziよるアンピコ・ロールが残されているが、これも再生テンポの間違いでは?と思うような物凄い早さ。聴き比べてみるのも一興だと思う。どちらにせよ二人ともリストの衣鉢を継ぐ大ヴィルトゥオーゾであることに間違いない。現代はこういったスケールの大きいヴィルトゥオーゾ不在の時代だ。これもコンクール入賞主義の弊害だとすると、現代のリスナーである私たちは実に大きな損害を被っているとションボリせずには居られない。乱暴な言いぐさだが、楽譜と正確さが全てならシーケンサーが1台あれば世界中のピアニストは全員失業です(笑)。しかし演奏芸術とは、そんなに単純なものではないということを、Cziffraは教えてくれる。

    Cziffraのこの二枚のSP盤はピカ盤だったので磨かなかった。



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