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Manuel Infanteの続編

1
前回、インファンテのOpera盤について書きましたが、
Opera盤のレーベル写真をアップする前に別のレコードが届いてしまいました。
こちらは縦振動の厄介なレコードです・・・。

作曲家 Manuel Infante (1883-1958)のピアノ独奏によるレコード。 
スペイン・セヴィリア近くに生まれパリで活躍。 
「Vito」など数曲のピアノ小品がまだレパートリーに残っているので、 
星の数ほどいる忘れ去られた作曲家よりもまだましな方なのでしょう。 
しかしピアニストとしてのインファンテは完全に忘れ去られており、 
そういった意味でもこのレコードは実に興味深い資料。 

サイズ12インチより少しだけ小さめのような気がします。 
形状はセンタースタートのPatheと全く同じなので、 
IdealというのはPathe社傘下のレーベルなんでしょうか? 

Pathe-ActuelleやPerfectレーベル盤と同じく、 
このレコードにも縦振動の再発とおぼしきOperaレーベルの10インチ盤が 
ありますが困った事に若干収録曲が違い、ブラームスがメンデルスゾーンの 
「Spinning Song」に置き換わっています (Opera盤が行方不明でマトリックスなどはまだ調べておりません。) 。
オマケとして、使用ピアノ(Gaveau)がこのIdeal盤で判明しました。 

追記(2010年1月):簡易再生をして確認したところ、ショパンはOpera盤と同じOp.34-3ではなく、Op.34-1でした!嬉しい誤算です。







Opera盤は蚊の鳴くようなピアノと絶大なトレースノイズ。 
古いGaveau独特の乾いた音色による聴きなれないショパン「ワルツOp.34-3」は、 
なんとも言えないおもむきがあります。 
なんとかIdeal盤を良い再生で採録して、復刻CDに収録したいところ。 

あぁ、8milサファイヤのチップ交換が必須なのでしょうか・・・。 
とほほ。パテ蓄音機も欲しい・・・。 

縦振動レコードはなるべくやり過ごしていますが、 
それでも随分と棚の済で燻っています。 
いつかまとめて手を付けなくては。

JUGEMテーマ:音楽

Serge Petitgirard

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    ここ2〜3年フランスのピアニストを重点的に聴いている。コルトーの弟子であるセルジュ・プティジラールもその中の一人。

    私にプティジラールを「ノクターン弾き」として印象づけることになったモノラルEP盤がコレ。「2つの夜想曲 Op.48」というだけで演奏には期待せずに購入したが、これが嬉しい大誤算だった。夜想曲の古い録音については片っ端から聴いているが、プティジラール盤は5本指に入るだろう。

    「Op.48-1」は劇的でスケールの大きな演奏をするピアニストに好まれるが、私はこういった演奏にはあまり関心が無い。しかし、中間部でも必要以上に盛り上げず、テーマの再現部からコーダまでの感情の襞を丁寧に歌い上げるプティジラールの演奏には溜飲の下がる思いだ。繊細さと明晰さを併せ持ちながら、程よいスケール感と独特のフレージングで聴き手を飽きさせないという芸当はなかなか出来るものではない。おそらくプレイエル使用だと思うが、決してブリリアントではなく、少し乾いた感じのいぶし銀のような音色。こういう演奏で聴くショパンにはまさに理想的なピアノだといえる。Irene Scharrerのアコースティック盤、Leo Sirotaの放送録音、ルビンシュタインのステレオ盤などに並ぶ名演奏だ。

    一方、裏面の「Op.48-2」は目立たない佳曲だが私は何故かこの曲が大好きだ。人気がないのか古い録音は極端に少ないが、まず思い浮かぶのがLeopold Godowskyの電気録音。これはテンポが速過ぎるのと、弾き飛ばしているとしか思えないようなよそよそしさに首を傾げずにはいられない。Godowskyともあろう人が何故こんな演奏なのだろうか?対してVictor Gilléの演奏は何物にも代え難いほど魅力的だが、その他はYakov Zakの幻の名演とLev Oborinの演奏くらいしかめぼしい録音が見あたらない。ショパンの作品中、特に「夜想曲」や「ワルツ」はテンポ設定が好みに合わないと聴くのが辛い場合が多いが、プティジラールの「Op.48-2」もやはり速すぎるのだ。しかし、ストレスを感じるどころかまた聴き返したくなってしまうのは実に不思議である。「なるほど、こういう解釈もあるんだな」と、むしろ聴き入ってしまう。

    とにかくプティジラールは実に優れた「ノクターン弾き」なのだ。この他にも多くの「夜想曲」や、「ワルツ全集」、「マズルカ」、「舟歌」、「即興曲全集」をモノラル期のLPに沢山残している。簡単にそれぞれの演奏に触れておくと、「ワルツ」はリズムをハッキリとさせずむしろ故意にぼやかしたような演奏、対照的に「マズルカ」は乾いたテイストで舞曲という部分を打ち出している。「舟歌」は少し肩すかしをくらった気分だが、「即興曲集」は「第二番」「第三番」あたりが非常に名演だ。どうやらプティジラールは、和声のつかみ方と、たゆたうようなリズムに、独特の息づかいを吹き込めるような曲で持ち味を行かせるタイプのピアニストのようだ。

    いずれにしても1950年代のフレンチ・ピアニズムの香りを楽しめること請け合いだが、やはりプティジラールの一押しは「夜想曲」である。一時期、CDでも一部が復刻されていたらしいが、アナログ盤も大して稀少盤ではないので気をつけていれば手に入りやすい。ぜひショパン好きの皆さんとシェアしたいピアニストの一人だ。

    あぁ、奇麗なビニール盤を磨くのは、ラクチンだなぁー。


    作曲家・雁部一浩氏のピアノ

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      先日、作曲家/ピアニストである雁部一浩氏のピアノCDを聴く機会があった。
      日頃の私は現代ピアニストの演奏を自ら進んであまり聴かないのだけれど、雁部氏の演奏には大いに心を動かされた。私としてはとても珍しいことだ。

      近年もDiskArtレーベルより新録音を続ける氏であるが、私がはじめに聴いたCDは1988年バリオホールにおけるデビューリサイタルのライブ盤で、ALM RECORDSというレーベルから発売されていたもの(現在は売切れで入手困難なので、中古盤を探すのが早い)。まず目を引いたのがスクリャービンの「練習曲 Op.8-12」である。この曲と縁浅からぬ私にとって、ピアニストの心のうちを知るにはもってこいのプログラムだ。

      まず雁部氏のソフトな出だしに「おやっ?」と耳を澄ましていると、静かな語り口に秘めた暗い情熱にグイグイと引込まれた。右手の駆け上がるようなパッセージが印象的な中間部では、スクリャービンの波乱の人生に思いを馳せるような世界観が視覚的イメージを伴うかの様に繰り広げられ、バスのオクターブはルート音としておざなりに扱われることなく音楽を有機的に支え、構成を明晰にさせる使命を負わされて徐々に情感を昂らせはじめる。
      再現部ではテーマが和音の連打を伴って戻り(スクリャービンはショパンの「夜想曲 第13番 Op.48-1」からインスピレーションを受けたのではないだろうか)ひとしきり唱った後、一気にクライマックスへ。ここからの爆発度は相当なものだが、むしろ細部まで行き届いた解釈が結果的に造り出したスケールの大きな音楽に心を打たれた。(追記:後述のDVDに「練習曲 Op.8-12」の約20年後の異演が収録されていいる)

      続いてショパン「告別のワルツ」では、雁部氏自身による大胆なアレンジが施されているのも大変興味深い。これはミハウォスキローゼンタール、ゴドフスキ、モンポウなどのマナーを正統に受け継いだクオリティである。どうやら最近の演奏会でも「小犬のワルツ」の洗練された編曲をアンコールピースとして演奏している様子で、これらの音源もぜひCDリリースして欲しいと願っている。そして、雁部氏が最も敬意を払っているように感じるリスト「コンソレーション第三番」「ウィーンの夜会第六番」や、本来の資質によって十八番と思われるラフマニノフ、ゴドフスキなど、聴き所は枚挙にいとまない。

      現在入手可能な新録音では、更に進化・洗練され、深みを増した雁部氏の演奏を堪能することができる。
      とりわけまず推薦したいのが雁部一浩 ピアノリサイタル [DVD]だ。収録された演奏はどの曲も素晴らしく、特にスカルラッティ「ソナタL.104」における奇跡的なまでに美しい装飾音の扱い、官能的でかつ神聖なリスト「ペトラルカのソネット第104番」プーニョやミハウォスキの名演にも並ぶメンデルスゾーン「狩の歌」における端正かつスケールの大きな解釈は真に必聴である。これらを含む演奏の一部はWEBサイトで試聴できるが、なかなかその魅力の本領は(個人的な感想であるが)伝えきれていない。できれば是非、手に取って自宅のオーディオで聴いて欲しい。真剣に向き合う価値のある音楽であると私は思う。

      雁部氏の演奏の特色は、自身が作曲家であること、そして19世紀のピアニズムへの造詣が深いことを抜きにしては考えられないだろう。ムジカノーヴァなどへの様々な連載や「ピアノの知識と演奏―音楽的な表現のために」 (ムジカノーヴァ叢書) などの著作には、パッハマン、ラフマニノフ、ホフマン、ゴドフスキ、ブゾーニペトリといった往年の巨匠たちの演奏からの引用が多く散見されるが、そういった19世紀の演奏家たちはみな一様に作曲をし、そのほとんどが自作ピアノ曲の録音まで残している。「一見やりたい放題にも思える19世紀的な演奏は、けっして出鱈目な自由ではなく、むしろ真に音楽的な教養に基づくものであり、その即興性の中にショーペンハウエルが言うところの『芸術とは第二の自然である』という法則を感じさせるものだと思う。」とは雁部氏の言葉であるが、私はこの言葉に手放しで賛同したい。

      現代ピアニストたちは、作曲家としての能力が求められなくなったことにより指を訓練する時間を得た。しかし、その一方では音楽を多角的に理解し表現する能力を失っているのではないか。私は最近「これは相当に深刻で危機的な状況である」と、多くの進歩的な音楽家たちが気づき始めたと体感する機会が多いのだ。これは非常に良い兆候だと思う。
      しかしまだまだ、このテーマは利害関係を超え音楽家同士の間でもっと議論されてしかるべきではないかと思っている。そうでなければ芸術家として本当の尊厳を取り戻すチャンスを遠い未来まで取り逃すことになるだろう・・・そんなことを雁部氏の演奏に耳を傾けながら考えてしまった。

      晩年のボシュニアコーヴィッチが来日の折、雁部氏の自宅を訪れてピアノ演奏をして行ったと聞いた。なるほど、雁部氏のロマンティシズムにシンパシーを感じていたのであろう。ふとそう思って、なんだか妙に嬉しくなってしまった。


      割れたレコードの話

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        このところ、割れたりひびが入ってしまったレコードの修復・編集を日課としています。

        僕は本来レコードを割らない人間なのですが、縦に収納していたら大事な大事なピカ盤のレコードに大きなひび(クラック)が入ってしまいました。縦収納とはなんと愚かな・・・・
        12インチ盤の約半分なので片面約二分ほどが再生不能。
        しかも運悪く両面で1曲なので、約四分ほどが全然かからない。
        あきらめきれず、すーっと大事に寝かせておいたのですが、遂に修復に着手したのです。

        音溝にかからないところに接着剤を少なめにつけて圧着するように固定。
        これでなんとか再生できるものの、そのスクラッチノイズは絶大。
        コレをPROTOOLSのプラグインで除去と思っていたのですが、
        はっきりした大きなノイズであるので比較的簡単なもののどうしても手作業には精度が劣り音質が犠牲になるのが我慢ならない。

        あーあ、これは手作業か・・・と、ウンザリしながらも、毎日少しずつ波形とにらめっこ。
        78rpmなので一分間に当然78回プラスアルファの除去ポイントです。
        掛ける事の約四分なので約320カ所※以上ってところでしょうか。
        ※追記:ファイル数を調べたところ、460箇所でした(泣)

        これが何処から何処までの範囲を除去するかで聴こえ方が違ってくるので、
        波形の流れが自然にきこえるベストポイントを探しながら作業すること約3日間。
        昨日、ようやくRebirthしました!!
        んー、われながら麗しい・・・(涙)。

        しかし、これをキッカケに割れたレコードたちが復活の刻を待ちわびながら、
        続々と行列を作りはじめました。
        ああ、レコードの下僕である私。

        おかげで肩と首をやられ現在湿布臭い僕なのでした。
        ってことで、今日はレコード磨きをお休み中です。

        Henri Etlinのエラール

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          かつてフランスにHenri Etlinというピアニストがいた。
          調べると1931年にフィリップ・ゴーベールの指揮でショパンのコンチェルトを演奏しているので、19世紀末から20世紀初頭の生まれだろうという事くらいしか寡聞にして知らない。
          同時期のゴーベールの共演者にロベール・ロルタがいるので同年齢くらいか?

          この人はレコードも謎だらけで、まず公式に発売されていたのかどうかも怪しい。
          私の知る限り仏POLYDORから10インチにサン=サーンスの小品、12インチにショパンのエチュード25-7,8,9 をいれたものが一枚。レコード番号がHE1(演奏者の頭文字)などという特別なもので、どうやらプライヴェートレコードのようだ。

          不思議なのは、10インチ盤と、12インチ盤の裏表で、録音条件が全く違う。特にショパンのエチュードは25-7の面と、25-8,9の面で、演奏している場所さえ違うようである。
          唯一共通しているのは、使用されているピアノがすべてエラールだということくらいか。

          さて、前置きが長くなってしまったが、ショパン「エチュード25-7」は出色の演奏である。
          録音はまるで風呂場で演奏しているような残響でプロエンジニアによる録音ではないかもしれない。
          にも関わらず「ニアレジハアジが弾いたらこうなるだろう」というような悲劇的で厳粛な響きにハッと胸を突かれた。エラールはこんなにも深刻な響きをするピアノだったのか。Etlinは余程この曲に思い入れがあったに違いない。

          このエチュードは技巧的な練習ではなく、楽曲の解釈にこそ目的があると思う。四角四面に弾いたらジェビエツキのようにつまらないものとなってしまうし、メロディを過剰に歌わせてドラマティックに偏っても俗悪で軽薄なものになってしまう。名曲10-6とともに、実は非常に難しい練習曲なのだ。

          だれもが顧みないような古レコードだが、かけがえのない大切な一枚。

          レコードつれづれ

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            最近、必要があって沢山SPレコードを聴いている。

            今日はロシアのピアニストを重点的に聴いた。
            ロシアのピアニストは古い人のものほど私好みだ。

            なかでもGoldenweiserは本当に凄いピアニストだと思う。
            スクリャービンやラフマニノフ、イグムノフんどとほぼ同世代。
            ショパンのマズルカやワルツ、メンデルスゾーンのスケルツォ、ベートーヴェンの月光ソナタなど、ため息が出るほど艶やかなタッチで旋律はこの上なく歌い、リズムも躍動的でありつつも統制が完全に取れている。細部の磨きあげはショパン弾きの中でも超一流だろう。フレーズ間のつなぎ方の見事さと云ったらない。この一部分だけでもゴリデンヴィゼルのずば抜けたショパン音楽への理解の深さに脱帽せざるを得ない。ぜひショパンのノクターンやバラードなども録音しておいて欲しかった。

            ソフロニツキーのSP盤はほとんどデンオンでCD化されてはいるものの、原盤で聴くと随分印象が違う。スタジオ録音のものは音も近くて鮮明。なかでもショパンの「告別のワルツ」と64-3あたりのレコードは上手く再生してやると、相当の名演奏だと気がつくようなレコード。64-3はルビンシュタインのステレオ盤のテンポが理想的だが、ほとんどのピアニストはこのワルツを早く弾きすぎて優美な魅力を引き出せていない場合が多い。ソフロニツキーとてテンポは速めなのが残念ではあるが、注意深く聴くとソフロニツキーが速めのテンポを採用した気持ちも分からなくはない。ギリギリのところで許せる範囲だと思いなおした。裏面の「告別」の方はまぎれもなく名演で、こういう簡単な小品を詩的に表現できるショパン弾きはそういないだろう。

            RIGA盤で聴いたYakov Flierのマズルカもなかなかの名演だった。ゴリデン先生から比べるとずいぶんと現代的で淡白であるものの、後年のステレオ全集とは違ってもっと若々しいのが良い。しかし、フリエールはショパンよりもリストの方がより相性が良いと思う。12インチ盤両面に録音された「ハンガリア狂詩曲第12番」あたりは名盤だったように思う。ちょっと引っ張りだしてこようかな・・・。

            Aleksander Kamenskyのチャイコフスキーの小品もなかなかかわいくて良かった。KamenskyはメロディアLPに一枚モノラル録音があったが、これもなかなか味わい深い。しかし、さすがにロシア人ピアニストたちはチャイコを良く録音している。オボーリン、フェドロワ、イグムノフ、ゴリデンヴェイゼル、エメリャノーワ、ミフノスキーなどなど。バラキレフやグリンカなどと共に、ここら辺りはロシアのピアニストで聴くのが一番だろう。チャイコのフーガなんてオボーリンぐらいしかSP録音していないのではないだろうか。Isaac Miknovskyのチャイコ「舞踏会のざわめきの中で(At the Ball)」は自身の編曲と云う事も相俟って大切なレコード。この曲はいつ聴いてもメランコリックなムードが良いなぁ。ミフノスキーは12インチ盤にショパン「バルカローレ」も録音しているが、あたたかなタッチでほっこり弾かれており、得難い魅力のあるレコードとなっている。

            さて、次はフランスピアニストを聴こうかな。
            今日もまたレコード磨きだ。


            新鮮な雑音を聴こう!

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              あるクラシック初心者の方から、ピアノ復刻CDの第一集と第二集で「どうしても片方ばかりを聴いてしまう」という話を聞いた。どちらに収められている演奏も歴史的な名演奏なのだから問題は演奏内容ではないようだ。話を聞きすすめていくと、どうやらその音質の差に一つの大きな要因があることがわかった。

              と、いうのも片方はSP盤を復刻したLPや更にそのコピーLPからの復刻CDであるので、音の芯がへたってヨレヨレなのだ。もう一方はSP原盤からの復刻で、打鍵ニュアンスやペダリングなどのディテールが聴いて取れる。ようするに新鮮さがちがうのだ。実は私も全く同じ感想を持っていたので、おお、この人はとても耳がいいなぁと感心してしまった。

              さて、当然ピアノ復刻のレコードであればピアノの音をメインに聴くでしょう。
              しかし、同時に僕らはサーフィス・ノイズも聴いている。
              実はノイズの音質にも、演奏全体の印象に大きな差が生じる要因をはらんでいる。

              復刻ものの場合、ノイズを聴けばどれだけ原盤の音質が手を加えられたかという事がハッキリと分かる。
              音をいじってノイズ除去をしすぎれば、どうしてもピアノの音も犠牲になってしまう(こもったような、ぼんやりとした輪郭のピアノの音になり、巨匠の名演奏のはずが冴えない演奏に聴こえる事になる)。
              またピアノの音にとどまらず、ノイズもまた余計にストレスのあるノイズに変容してしまう。

              古い録音をより心地よく聴く為には、実はノイズの大小(SN比)よりもノイズ自体の音質の方が本当は重要なのだ。
              伸びやかでさらさらとした新鮮なノイズは楽器の音と分離しやすく、ピアノの音への集中力を高く保持することが出来れば意外なほどに音楽の邪魔にならない聴き方が可能だ。

              面白い小説を夢中になって読んでいるとき、生活雑音は遮断され一切耳に入らなかったりする。それと同じく、ピアノの音に意識を強くフォーカスすれば、ノイズを完全にフィルタリングする事が出来る。人間の能力は凄い。これは原音を損なわずに歴史的録音を愉しむ最高のノイズリダクションだ。

              まぁ面倒な話はおいといて、とにかくどうせなら音楽も雑音も新鮮な音で聴こう!そうすれば伝説のピアニストたちによる演奏が、思いのほか生き生きとよみがえるはずなのだから。


              5/27「ピアノ音楽の秘かな愉しみ〜第二夜」

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                19世紀的プログラムで大好評を博した第一夜に気を良くしての第二夜開催です!
                前回は小さなスタジオだったので、 今回はテーブル席でゆっくりとくつろいでいただきながら、 ピアノ演奏を聴いていただける素敵な場所をご用意させていただきました。

                「ピアノ音楽の秘かな愉しみ〜第二夜」
                5/27(水)開場18:00〜 開演19:30〜
                料金:3500円(1ドリンク付き)
                At 恵比寿アートカフェ・フレンズ
                ご予約はsakuraphon@78rpm.net 夏目までお願いします。
                場所は JR 恵比寿駅西口から徒歩1分の新しい高層ビルの地下一階です。
                本格的なディナーやドリンクをしながら、ピアノ演奏をお楽しみいただけます。会社帰りやデートに(笑)よろしくお願い致します!

                詳細は下記PDFファイルにて
                「ピアノ音楽の秘かな愉しみ〜第二夜」
                http://www.78rpm.net/pdf/sakuraphon0527a.pdf
                http://www.78rpm.net/pdf/sakuraphon0527b.pdf

                本番使用のピアノはVintage Steinwayで、とても良い音です。
                今回のピアニストは全員で三名です!

                写真は、先日見に行ったGaveauピアノ。
                状態が良くなかなか良い音でしたが、お値段もなかなかでした

                Marie-Madeleine Petit

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                  Marie-Madeleine PetitMarie-Madeleine Petitという女流ピアニストがいた。寡聞にしてあまり詳しい情報も提供できないが、イーヴ・ナットなどに習い、ジュネーヴ国際音楽コンクールにフィオレンティーノなどと並んで1947年第二位入賞。1950年代に入ってから33回転の7インチ盤を二枚リリース。それが、ここで紹介するレコードだ。それほど人気のあるピアニストではないので注目する人もほんの一握りのマニアだけだと思うが、どこか心に残る不思議な魅力をもつレコードなのだ。

                  まずはベートーヴェンの「月光ソナタ」。針を落としてまず気づくのはピアノの音の美しさ。プレイエルなのだろうか?浅めの打鍵で幾分ドライではあるが、濁りのない澄んだタッチのアルペジオが心地よい第一楽章。同じくフレンチ・ピアニズムに身を置いた女流ピアニストのAline van Barentzenが第三楽章で見せたような激情や深刻さはないものの、パッセージを丹念に扱いつつも畳み掛けていく独自のニュアンスが興味深い。詩的な情感を全体に漂わせた後味の良い演奏だ。



                  もう一枚のショパンは、ベートーヴェン盤の後に入手。どちらが好みかと言われれば、迷いはするがショパン盤を挙げる。片面に「バラード第1番」、裏は「エチュード作品10-3, 8, 5」という平凡な選曲。録音のせいか実際にピアノがちがうのか定かではないが、ベートーヴェン盤ほどピアノの音色がまず印象として飛び込んでこない。さらに、名演の多い「バラード第1番」ではあるが、個人的にはあまりすすんで聴きたくない曲だ。
                  好ましくない条件下だが、途中で針を上げるどころか繰り返し聴いてしまった。ハンガリーの女流にアギ・ヤンポールというピアニストがいるが、彼女の残した「バラード全集」を思い出した。大体「バラード」は必要以上に劇的に演奏される事が多いような気がするが、そういった単純なエモーションは長年ショパンを聴いてきた人間には辛いものがあるのではないだろうか。そんな風に思っている私には、Marie-Madeleine Petitの端正さがとてもありがたいのである。
                  こういった大曲の演奏は全体の構成力の重要性がまず挙げられる。その意見におおむね反対ではないが、ショパン演奏においては堅苦しいアカデミズムよりも、もう少し軽い「後味」のような全体の清涼感の方を大切に感じる。またディテールにおいては「瞬間の美」でもかまわないから、そのピアニストならではの詩的な表現を聴かせてほしい。そうでなければどんなにメカニカルがパーフェクトだったとしても、また聴きたいと針を落とすまでにはいたら無い事が多いのだ。

                  Marie-Madeleine Petit長々と書いてしまったが、実は私が一番気に入っている演奏は作品10からの三曲のエチュードだ。「別れの曲」は予想どおり清純なピアニズムが功を奏し、理想的なインテンポとレガートの美しい内声部、そして自然なページのめくり方とでも言えばよいのか、息の継ぎ目での間の取り方は絶妙だ。「黒鍵」は遅めのテンポで丁寧に弾かれていて、とくにピアニシモやがんがんと響かせないあたたかな低音部が印象的だ。

                  エチュードというと技巧の爽快さとスリルを求めるようなアスリート的な演奏があふれる一方、詩的な演奏が少ないように思う。ここに収められた「エチュード作品10-8」はMarie-Madeleine Petit 出色の演奏というだけでなく、多く名演奏中でも特に記憶に残るもの。技巧的な野心の匂いもなく、一個の音楽としての美しさに無心で耳を傾けることができる。もう少し年長であるIrene Scharrerの10-11あたりの名演レコードの美しさに通じるところがあるかもしれない。10-8にはKleebergのピアノロールや、Effenbachのエンディングが印象的なレコードなどもあるが、私は今や忘れ去られてしまったMarie-Madeleine Petitの「エチュード作品10-8」を絶品だと思っている。



                  ショパンの練習曲は、最近12曲もしくは24曲セットでレコード化される事が多いけれど、前奏曲と違ってもともと24曲を聴き通すように作られていない。そして、ピアニストも24曲をそれぞれ魅力的に演奏できる力量のあるピアニストを聴いたことが無い。落穂拾い的ではあるが、こうして名演奏を一曲づつ聴くくらいの方が私には丁度良いのかもしれない。

                  今日もしゅるしゅるレコードを磨く。



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                  「ピアノ音楽の秘かな愉しみ」第一回演奏会

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                    小さなちいさな演奏会「第一回・ピアノ音楽の秘かな愉しみ」開催の日も、 もう残り3週間を切りました。 初めての試みなのでドキドキ/ワクワクしていますが、 よくよく考えてみると本当にドキドキしているのは 僕ではなく若いピアニストの2人でしょう。





                    そもそもこの演奏会を開催するキッカケは、新人ピアニストさんたちの演奏を気軽に聴いていただける場がもっとあっても良いのでは!という、長年温めてきたささやかな想いからでした。世界的に有名なピアニストの方でも、なかなかチケットやCD新録が売れない世の中。無名の若いピアニストさんたちは一体どうすれば良いのでしょうか?という、かなり青臭いけれど僕なりの小さな答えのつもりです。





                    一昨日、彼らのアトリエと称するピアノ練習室にて、当日配布予定CD-Rの出張レコーディングを済ませて参りました。このアトリエの母屋、昨年の初夏火事に遭ってしまい、 その無惨な焼け跡は未だ放置されたまま・・・。

                    この母屋の焼け跡を「上から木材とか落っこって来て、怪我をしても責任とらないからね〜アハハハ」という大家さんの暖かいエールを背中に受けながら、
                    大きな機材を抱え瓦礫の中をすすむわが録音部隊は文字通りプチ命がけ(?)
                    こんな経験はなかなか出来ないものです(笑)

                    四方は文字通り瓦礫、このアトリエだけが不思議と奇麗に焼け残ったラッキーは何なのだろうと思いながら練習室の扉を開いたら、そこには二台の古いピアノが狭い部屋に肩を寄せ合うように置いてありました。






                    1台は1920年代に製造されたKNABEのグランドピアノ(写真)。 これは松原氏の尊敬するゴドウスキがブランズウィック録音で使用したタイプとほぼ同じものだそうです。心なしか黒鍵が長く、その分白鍵が短いように感じられました。打鍵は浅く、音は意外にも艶やか且つきらびやか。





                    もう1台はなんと1870年製造Grotorian-Steinweg(元祖スタインウェイ)のアップライト(写真)。 これはクララ・シューマンが晩年使っていたピアノと同じ工場で作られたそうで、1905年にはるばる日本へ渡ってきたもの。 一見割れているのかと思うような象牙の分割鍵盤で、 さすがに調整不能な感じですが触ってみるとラグタイムピアノのようなひなびた良い音がします。 (昨年ここを訪れたピアニストのYves Henri氏がこのピアノを試奏して「まだこのピアノには魂が残っているね!」とおっしゃられたそうです。)この二台の長老級ピアノが生き延びる為に、 まるでここだけが火災から逃れられたのかも 、脱ロマン派を目指す僕でもつい想像を逞しくしてしまいました。




                    録音の段になると飛行機は飛ぶは、鵺は啼くは(?)、大家は高笑いをするはで、 防音スタジオのクオリティとはほど遠いものですが、 この二台の古びたピアノの特性を生かした味わいのある選曲をしたつもりです。

                    プラス2曲は、残念ながら健康状態により今回出演を見送らせていただいた一條女史のシューベルトを併録。彼女の普段のキャラとは裏腹に(?)、誠実で貞淑な演奏が聞込んでいくうちにジワジワと魅力的な録音。使用されたのはベーゼンドルファーのグランド。(彼女は自宅でもベーゼンなのですが、このピアノの音色の方がちょっと普段より派手目な印象でした。)



                    そんなこんなで手作り感満載のおみやげ風CD-Rではございますが、その分他ではあまり聴く機会の少ない珍しい選曲をしたつもりです。ご来場の皆様(先着35名様までですが・・・)にご用意いたしておりますので、少しでも愉しんでいただければ幸甚です。




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